歴史と幻想

私は、ある歴史講座に所属していますが、歴史の面白さとは何か考えることがあります。

先日、福岡市の板付遺跡の見学に行きました。この遺跡は縄文時代晩期のものですが、現在と変わらない、大掛かりな水路などの灌漑施設を作り、大規模な水田稲作を行った遺跡です。

3,000年近く前にこのような文化や生活があったとは、以前は予想もしませんでした。それは私たちの心の中に、昔の人はその日の食料を得て生きるのに精いっぱいの生活を送っていたという勝手な思い込みがあるからです。現代は優れていて昔は劣っているという幻想です。

しかし、当時の人々は不安定な狩猟採集と、安定しているが労力の大きい水田稲作を比較して水田稲作を受け入れ、道具を作り、自然を作り変えて水田稲作を運営していったのです。当時から人々は社会を作り、力を合わせて前に進んでいたと言えます。

歴史を学ぶ面白さはここにあります。勝手な幻想は常に打ち破られ、当時の人々に畏敬の念が湧いてきます。

また新たな発見があると、歴史は書き換えられて行きます。素晴らしい文明の発見だけでなく、大量虐殺の跡も見つかったりして、人間の振れ幅の大きさに驚きます。

幻想の中に安住したい私たちに、歴史は多くの事実を突きつけ、思考を促してくれるのです。