縄文時代の後半(約5千年前~3千年前)にさかんに作られた土偶は、やきものの人形です。大きさは、高さ30㎝くらい、ほぼすべてが女性像です。掌の中に収まる小さなものもあります。
土偶の形はそれぞれで、スタンダードはありません。有名な遮光器土偶は、エスキモーの人達が使用していた皮製の遮光器、つまりサングラスのような大きな目をして、髪は複雑に結い上げ、身体のどの部分も大きく丸く作られ、また身体には装飾が施されています。一目見たら忘れられない、強烈な存在感が漂っています。
また、割れたり、身体の一部が欠損して見つかることが多いのが、土偶の特徴です。遮光器土偶は、東北から大阪辺りまで、コピー土偶が500個くらい発見されていますが、青森で発見された一番有名な遮光器土偶は左脚がありません。脚が失われた状態は、脚の病気で苦しんだり喪失した人の痛みが表現されているのかも知れません。
土偶は女性像ですから、当時の女性達の気持ち、無意識的の感情を投影していると思われます。個性を表現し美しく飾り立てたい願望、妊娠・出産の大変さに耐える堂々たる身体像など、女性の願望や背負っているものが強くデフォルメされ、投影されているようです。
この遮光器土偶がたくさん作られたのは、それだけたくさんの需要があったということです。願望も苦労も悲しみも引き受けてくれるのが、土偶だったのではないでしょうか。