今、ここで

時間の「今」、空間の「ここ」、その二つが重なるのが「今、ここ」です。私たちの存在は「今、ここ」にしかありません。

「今、ここ」の以前は過去、以後は未来です。「今、ここ」を生きる積み重ねが人生となります。そのように「今、ここ」の時間と場所で存在している私達ですが、果たして「今、ここ」を自分のものとできているでしょうか?

過去の苦しい思い出に支配されて、重苦しく憂うつな気分を抱えていると、「今、ここ」を力いっぱい生きることは難しくなります。未来への不安を抱えていても同様です。「今、ここ」を、かけがえのないものとして生きて楽しむことができないのです。

このように、「今、ここ」を生きる妨げになっている憂うつや怒り、不安などのネガティブな感情は、否定してもまた出てきます。その奥にずっと抱えている問題があることが多く、何とか問題と向き合って行かないと、いつまで経っても「今、ここ」を生きることが出来ません。その結果、時間が過去のままで止まってしまったり、未来へいつまでも進めなかったりしているのです。

しかし、「今、ここ」の妨げになっているとはいえ、問題を邪魔者のように切り捨てることはできません。また、一人で向き合おうとしても、つい自分を責めたり他者を責めたりの繰り返しで、なかなか向き合うのは難しいものです。

心の体験は自分だけのものなので、なかなか他の人と共有するのが難しいと考えがちです。しかし、たとえ十分共有してもらえなくても、辛い体験をしてきたと認めてもらうことが、自分と向き合う第一歩になります。決して否定されることなく、自分の人生を懸命に生きて来たことを認め重んじてもらうのです。

 

辛い体験をすると、その原因は自分の弱さだと自分を責め、自信を失いがちですが、認め重んじてもらえば、自分を重んじる心が芽生えます。自分を重んじることができれば、自己否定の気持ちや不安で覆われていた「今、ここ」が、自分のものとして少しずつ戻ってきます。止まっていた時間が未来へと動き始めるのです。