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分かち合い

私達は、生まれた瞬間から、泣くという自己表現を始めます。そうすると、「元気な子だね。よしよし」と笑顔が返ってきます。自分の気持ち、表現が、相手と分かち合われたのです。

これから先も、笑ったり、泣いたり、怒ったり、悲しんだりと感情表現をするたびに、周囲は懸命に分かち合いをしてくれます。こうして分かち合われた感情は、自分のものとして、受け容れられるようになります。そして、折に触れ、自分の感情を抑えることなく適切に表現し、伝えることができるようになるのです。

言葉だけでなく、文章にしたり、絵を描いたり、歌を歌ったりと、自分を伝える表現は多彩です。感情を表現し分かち合うことは、生きる喜びも苦しみも分かち合うことですから、生きて行くための大きな力になります。

分かち合いの乏しい生い立ちでは、自分の感情、特にネガティブな感情を受け容れるのが難しくなります。怒りや悲しみなど、分かち合われることの少なかった感情は、抑え込まれ、憂うつな感情に変わります。そこで、ネガティブな感情を避けるため、他者とぶつかることを避け、周囲に合わせて行くことが多くなります。分かち合われてない感情は、こうしてどんどん溜まって行くのです。

人は感情の分かち合いで、一体感や高揚感を味わい、母親の体内に戻ったような安心感を覚えます。お祭りやコンサート、スポーツなどで盛り上がる時も、このような一体感に包まれます。ただし、スポーツなどルールがあるもの以外で、他者を排撃するような感情の分かち合いは、分断と攻撃をもたらす危険性があります。どのような感情なのかは、注意が必要です。

このような注意を払いつつ、小さな感情も、大きな感情も、その都度誰かと分かち合うことが、本当は望ましいのです。

今まで分かち合えなかった感情、特にネガティブな感情がたくさん心に残っていると、徐々にうつ状態になって行きます。こうなると、感情を出すことや分かち合うことが、怖く感じているかもしれません。

分かち合うことができたら、荷物が一つずつ減ります。

 

周囲に合わせるのではなく、自分が発信して分かち合う、つまり赤ん坊が発信して周囲が分かち合ってくれたのと、同じようにやって行くのです。分かち合うことができると、感情が少しずつ自分のものになって来るでしょう。