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アウフヘーベン

アウフヘーベンは、かなり以前使われていた言葉ですが、数年前、小池百合子東京都知事が使ったことで、新たに脚光を浴びました。

ドイツのヘーゲルが唱えた哲学用語で、日本後に訳すと「止揚」という分かりにくい言葉になります。平たく言えば、対立する要素を一方だけを選ぶのではなく、両者とも受け容れる新たな次元に至るということでしょうか。

これでも難しそうなので、具体的な話に入ります。

私達の人間観、人生観を作るのに大切なのが、両親との関係です。母親と密着し守られる乳幼児期から成長すると、愛情と共に自立を促す父親との関係が加わります。自分の願望に寄り添ってくれる関係と、自立を促す関係と。

この相反する要素に戸惑いながら、時間をかけて、どちらも自分の中に取り入れて行くのが成長です。愛着と自立という一見相反する要素を、アウフヘーベンしていくのです。このアウフヘーベンには当然不安が伴いますが、父母との関係が安定していることで、徐々に不安を乗り越えて行けます。

問題なのは、父母の中に不安が存在している場合です。母親に不安があると、自分の思い通りにならない子供の反応に不安を覚えます。子供は、母親の不安に反応し自分の感情を抑え、いつも母親の顔色を見て、精神的に母親から離れることができません。

父親に不安があると、子供に関心を持てなかったり、自分に逆らう存在に見えたりします。子供は突き放され、自立ではなく孤立してしまいます。

もちろん、父親や母親の役割は、違うばあいもありますし、父親もしくは母親だけの一人親家庭でも、子供に愛着も自立も与えられることがほとんどでしょう。

子供にとって、愛着と自立をアウフヘーベンすることが、生きる安心感や土台作りになります。それができない不安に満ちた環境では、自分よりも周囲の反応を重視して生きるようになり、いつも不安で、自分という実感が持てません。

 

この不安、満たされなかった愛着、自立などすべてをもう一度見直してアウフヘーベンすることが必要です。