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機能不全家族

「機能不全家族」は、最近よく聞くようになった言葉です。ストレスや対立が多く、家族として機能していない状態の家族を表します。

家族として機能しているとは、メンバーに信頼感があり、自分の役割を意識し、世代間境界や個人の境界が守られている状態です。その結果、家族としての一体感が形成され、互いを認めながら、それぞれの役割を取って集団が運営されます。

この時、融合と分離という、一見相反する機能がごく自然に働いています。機能不全家族の場合は、境界が消えるほど融合したり、境界というより孤立と言えるほど、バラバラだったりします。

考えれば融合と分離は、どんな集団にも必要とされる要素です。最終的には国家という、最大の集団にも当てはまります。

見渡せば、機能していない国家は多々あります。為政者が軍隊を使って国民を抑えつけ従わせるのは、融合とは言えず抑圧です。強いリーダーシップがなく、いろいろな勢力が対立するのは、分離ではなくバラバラの集団です。

いずれも、国民は守られず危険にさらされ、亡命したり難民になったりすることが起こります。このように、国家が機能不全に陥ると、大きな悲劇につながります。

家族が機能不全になると、やはりメンバーは守られず、いろいろな病気が生じることがあります。うつ病、社交不安障害、アルコール依存症、摂食障害、消化器の病気など、ありとあらゆる病気が考えられます。病気は個人が発症しますが、家族が機能不全を起こしている場合は、その影響が大きいのです。

そこで病気を本当に治療するには、その人の属している集団を知り、アプローチする必要があります。また、治療において、本人が、自分の問題と集団の問題を分けて考えるようになること、つまり境界を作れることは、病気の改善につながります。

 

機能不全家族という概念がもたらした功績は、病気という個人の機能不全は、実は集団の機能不全を表していることがあり、個人を見る時、同時に集団を見る視点が必要という気づきと思われます。