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ヤングケアラー

最近、ヤングケアラーという言葉をよく耳にするようになりました。

通学や仕事のかたわら、障害や病気のある家族の介護をしている、18歳未満の子どもを指します。2021年の厚生労働省の調査では、中学2年生の6%、高校2年生の4%がヤングケアラーで、この2学年だけで約19万人になります。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、ヤングケアラー達は「学校などにあまりいけない」が31,2%、学校に行っても「授業や部活に集中できない」が27,4%と、深刻な影響を受けています。しかしその中で実は、自分をヤングケアラーと認識していない人が8割にものぼるのです。

家族の中では、動ける人が動けない人の面倒を見るのはやむを得ないとされ、ケアという仕事をしているとは評価されないという現実が、この背景にあります。その結果、ケアという事態が発生し、担うのが18歳未満の子供達しかいない時、それを行政に届け出て支援を受けるという制度も、現在はありません。

家事や介護の仕事はエンドレスで、とても負担の重いものです。それを、学校に通って勉強したり、友人関係を作ったりという、人生の基礎を作る大事な時期に引き受けると、大事なものが十分に築けないまま、大人になってしまいます。

勉強ができなかった、学歴や資格が取れなかったなどの社会的な不利益に加え、自分の感情を出せない、自己主張できない、自分が劣っている意識など、内面への影響も心配されます。

これは、今までアダルトチルドレンの抱える問題とされてきたことと重なります。依存症の親や、支配的な親、無力な親などを抱えて、何とか親の問題をカバーしたり、自分の欲求を抑えて問題のない子供であり続けたアダルトチルドレンは、成人してから自分の欲求がよく分からなかったり、周囲との間に壁を感じたりして、生き辛さを抱えることがよくあります。子供として過ごす時期にそれができず、周囲の都合に合わせて生きるしかなかったことが、大きな問題を残すことになったのです。

ヤングケアラーの問題に光が当たったのは大事なことで、今後本人たちの立場に立った具体的な支援が課題です。それと同時に、今まで表面化することの少なかったアダルトチルドレンの問題に、アプローチすることも必要と思われます。

ヤングケアラーが自分をヤングケアラーだと気づいてないように、アダルトチルドレンも、自分がアダルトチルドレンだとは気づいてないことが多いのです。まず自分が置かれている状況について、客観的に知る機会があること、自分がヤングケアラーやアダルトチルドレン(両方の場合も多いでしょう)と分かったら、自分に添った必要な支援を受けられることが必要です。

 

自己主張できないが故に今まで日の当たらなかった子供達の人権の問題として、具体的に考えないといけない時期ではないでしょうか?