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パーシビアランス(忍耐)

NASAが昨年7月打ち上げた火星探査機は、7か月かけて宇宙空間およそ4億7000万㎞を飛行し、219日火星に到着しました。この探査機に積まれていたのが、探査車「パーシビアランス」です。

パーシビアランスの使命は、火星に生命が存在した痕跡を見つけ出すこと。もし、地球外に生命が存在したとすれば、地球の生命の歴史にも新たな発見が始まるかも知れません。

ところで「パーシビアランス」とは日本語で「忍耐」のことです。

気の遠くなるような長い宇宙空間を飛び続けるには、数々の苦難を乗り越えたことでしょう。いざ火星に降り立った今からも、想定外の出来事も含め苦難は続きそうです。「忍耐」という命名は、そのようなことを連想させます。

しかし、アメリカという国は、1776年建国し、約250年の歴史しかない若々しい国です。その中で、数々の問題や矛盾を抱えながらも、自由と民主主義の国としてやってきました。パーシビアランス(忍耐)はアメリカの探査車の名前としては意外な気がします。

日本では昔から、忍耐によって精神力が養われるという考え方があります。しかし、目的や見通しがあっての忍耐は良いのですが、それがない忍耐は拷問のようなものです。

例えば、一方が他方に価値観を押し付け忍耐を強いるやり方などで、アメリカの奴隷制度はまさにこのような一方的な忍耐を黒人に強いるものでした。価値観を押し付けられ、自分の考えは否定されるという状況で忍耐を続けていると、気力や自信は失われます。そして自分らしさを見失い、周囲の価値観に合っているかどうかだけで、自分を判断するようになります。忍耐を強いられた側には、深い傷が残るのです。

一方、目的があっての忍耐は、その忍耐の過程こそ、葛藤を抱えつつ、発見と創造性につながる可能性に満ちた大切な過程です。人種問題その他の諸々の矛盾・分断を解決していくには、目的を共有した上での忍耐が求められます。

 

そのような今の状況を考えると、「パーシビアランス」という命名は、なかなか意味深く感じるのです。火星探査でも結果を急がず忍耐強く向き合い、是非深みのある成果を出して欲しいものです。