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マンホール・チルドレン

 

 「マンホール・チルドレン」は先日、BSで放送されたドキュメンタリーです。

 

社会主義体制だったモンゴルは、20世紀末に体制が崩壊して社会は大混乱に陥りました。体制の崩壊とともに経済も崩壊したため、親は子供を養えず、大量の孤児が生まれました。首都ウランバートルでは、そんな孤児たちがマンホールをねぐらとして暮らし、マンホール・チルドレンと呼ばれました。その数四千人余り。冬は零下40度にもなるウランバートルですが、マンホールの中には暖房の配管が張り巡らされ、孤児たちはそこで寒さをしのぎ、生き延びたのです。

 

番組では孤児の中の、ボルトとダシャという二人の少年と、オユナという少女の人生を追っていました。同郷のボルトとダシャは友情で結ばれ、厳しい境遇の中で助け合っていました。オユナは歌の好きな笑顔の絶えない少女で、孤児たちの太陽のような存在でした。

 

ボルトとダシャはゴミ拾いをしながらマンホールからの脱出を目指しました。オユナは結婚しましたが、マンホール・チルドレンだったことがばれて離婚され戻ってきました。傷ついたオユナを巡ってボルトとダシャは対立します。その後の人生の壮絶な紆余曲折を経て、現在のボルトとダシャが描かれています。マンホール・チルドレン時代から20年、二人とも仕事と家族を持ち、友情は復活していました。

 

何とも言えない、深い感動を与えてくれるドキュメンタリーです。

 

社会が混乱すると、そのしわ寄せは子供達に向かいます。一般に人々は、子供は無邪気で思慮が発達していないと思っていますが、そうではないのです。1314歳のマンホール・チルドレンの三人は、最下層の存在として社会の差別や偏見にさらされながら、この境遇から脱出するにはどうしたら良いかを考え、日々行動しています。

 

三人の心の中には愛情があり、それが彼らを絶望や無力感から救い、現実の人間関係を作っていけたのだと思われます。しかしオユナは、離婚後に味わった絶望感から回復できませんでした。

 

心の中の愛情とは、ボルトの場合、遠くにいる母親の信頼に基づくものでした。物乞いまでして苦労した母親ですが、ボルトを深く信頼し、ボルトもその信頼に応えたいと思っていたのです。親から子供への最大の贈り物は、存在に対するゆるぎない愛情と信頼です。その贈り物をもらえなかった子供は、自分の存在の意味が分からず、不安や無力感を抱えて苦しむのです。

 

モンゴルのマンホールは、今は封鎖されているそうです。マンホールは孤児たちが逃げ込み、孤児たちを守ってくれた場所です。家庭でも施設でもありませんが、孤児たちを生き延びさせてくれた場所があったのです。